春はあけぼの。やうやうしろくなり行く、山ぎわすこしあかりて、むらさきだちたる雲のほそくたなびきたる。
清少納言の枕草子の一節は京都比叡山から明ける夜明け前を実に微妙に捉えている、夜明けではなく、闇でもなく、暁でもない、比叡の秀峰にかかる雲のむらさきに感動している、千年を過ぎた今日のあけぼのも、やはりむらさきであった。
夏はよる、秋は夕暮れ、冬はつとめて、と枕草子はつづられていく、めぐりくる季節に感動し感謝している、いにしえの偉人の思いがつたわって、その色へこころがうれしい。
色は人の心を動かす。真っ赤な椿で出始まったわが庭も、薄紅の桜で明るくなり、純白の木蓮、紫の山ツツジ、黄色の水仙も庭の隅に可愛いく、冷たい冬の風に耐えて春風とともに、それぞれ自分達の色の饗宴である。この素晴らしい彩りに感動し、ひと時 生きる痛みを忘れ、授かった命を、大自然に深い感謝である。
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